小学生が通学時に背負うランドセルの重量によって体への負担増が懸念され、メーカーによる対策商品の開発が進めてられている中、学校用水着開発の大手「フットマーク」が10日、東京都墨田区の本社で「学校の荷物重い問題は解決された?」と題したイベントを開催し、最新のランドセル事情などの調査結果を発表した。識者はよろず~ニュースの取材に対し、負担の緩和につながる「時間割に合わせて教材を入れ替える姿勢」の浸透を呼びかけた。
同社は2024年3月、通学にランドセルを使用している小学1~3年生(23年度)と保護者1200組を対象に意識調査を実施。その結果、「入学後すぐに重さを感じる」という児童が66.7%で、入学後に「ランドセルの買い替えを検討している」という親は664.4%と、21年の調査から2・3倍に増えていることが分かった。 パソコンやタブレット端末を利用した「デジタル教科書」の導入が今年度から本格導入予定だが、文科省は「当面は紙との併用が望ましい」とし、持ち運びする教材の分量は増えている。同社の調査ではデジタル機器と紙の教科書を併用している児童は8割を超え、実際に65.8%の子どもたちが持ち運びをしているという結果になった。
一方、ランドセルの平均重量は昨年の4.28キロから今年は4.13キロと微減したことが分かった。長年、ランドセルの重さと児童への影響を研究している大正大学の副学長で地域創生学部同学科教授の白土健氏は「置き勉の推奨が徐々に進んでいることが大きいのではないか」と推測した。「置き勉」とは教材を学校に置いて登下校すること。通学時の荷物の重さには「置き勉」の可否が影響する。
同社の調査によると、「置き勉」を禁止されているという児童は32%、禁止されてはいないが「家庭学習のため」「なんとなく持って帰っている」という児童が62.1%だった。その中で「時間割の教科以外の荷物を持ち運んでいる」という声が注目された。たとえば、その日、社会科の授業がなければ、教科書や地図帳などは持参しなくてもいいわけだが、不要な教科まで持参しているというのだ。
白土氏は当サイトの取材に「忘れ物をしないように全教科分を詰め込む児童たちもいて、無駄なものまで(ランドセルに)入れてしまう。親御さんが『(教科書は)時間割に照らして入れましょうね』と言ってくださるといいですが、そういう『時間割に合わせて必要な教科分のみを入れる』という習慣を持たない子どももいて、全部を入れてしまう。忘れ物をして怒られないようにするためです」と説明した。
さらに、同氏は「教科書以外でも、ワークブックや連絡ノートなどもありますし、そこにタブレットかPCが入ってくる。タブレットとPCの併用はなく、どちらか一方になりますが、IPad(アイパッド)ならまだ軽いものの、パソコンになるとかなり重いものがある。また、水筒も重いですね。1リットル以上飲むんじゃないですか。ジュースはダメということもありますし、学校としては(水飲み場などに)並ばせたくない。密になるとか、時間がかかるといった理由です。それで水筒を持参しますが、首からぶら下げるとぶらぶらしてしまうので、ランドセルのサイドポケットに入れるとかになる。だが、革製だと入れづらく、そういう意味では(軽量のバッグで)サイドにゴムが付いて柔らかいものに利点がある」と付け加えた。
昭和の小学生はランドセルのサイドポケットに定規やそろばんといった「平らなもの」を差していたが、熱中症対策の一環で必需品となった水筒のような円筒形は入りづらいという点からも「柔軟性のあるバッグ」の需要もある。その水筒問題はまた別の課題になるが、まずは教科書など教材の重さを軽減させる対策として、白土氏は「忘れ物をしたくないと思う子どもたちの保護者は一緒に時間割を見て、該当科目のみをランドセルに入れることを提唱したい」と述べた。
会場では、同社の開発担当者らが布製ランドセル「ラクサックジュニア」の使用方法などを説明。白土氏はそうした商品の機能性などを評価し、「最近は自治体が新1年生に軽量カバンを提供するケースがある。背景にランドセルの高額化がある。購入価格は平均5~6万円未満が24.1%、6~7万円未満が22.5%と大きな割合を占め、高価な存在であるランドセルが『格差の象徴』となる懸念もある」と付け加えた。その上で、白土氏は「ランドセルは革製で…という考え方以外にも多様な選択肢が生まれ、いい方向になっていると思います。好みのランドセルで楽しく登校できれば」と締めくくった。筋肉痛や肩こり、腰痛といった身体面の負担と、通学自体を憂うつに感じるメンタル面の不調を総称した「ランドセル症候群」に今後も向き合っていく。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)